私の働く高崎の街では、朝の風が駅前を渡り、平野の広がりと山の稜線が清涼さを運んでくる。東口の芸術劇場は夜、群響の音色を映し、残業帰りの胸に静かな灯を点す。二千席の拍手が街路樹を揺らす光景を、何度も見た。
西口には「シネマテークたかさき」という映画館があり、百余席のスクリーンに世界の物語が息づく。春の映画祭では見知らぬ国の息遣いや若者のまなざしが観客に灯りを残し、街の景色を少し変える。
物流の往来が国道に響き、街に新しい息吹を運ぶ。発展の勢いは、建設業を中心とした求人の活況にも表れている。花火の夜には胸の奥を熱が駆け抜ける。我々の建築メンテナンスは地味だが、暮らしの綻びを繕うたび、街が澄んで見える。休日にはカフェや美術館、小さな映画館に寄り、商店街で温かなパンを抱えて帰る。働くことと生きることが、静かに重なり合っていく。
若い同僚は終業後、声を弾ませ次の挑戦を語り合う。街に灯がともると、胸に静かな力が満ちてくる。働くほどに街は居場所となり、光や香り、花火の余韻が明日を紡ぐ力へと変わる。扉の向こうには挑戦の余白が残り、私は今日も手を動かす。
